
ニキビとは
ニキビは医学的には尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)と呼ばれ、皮膚の毛穴が皮脂や角質で詰まったり、皮脂が過剰に分泌することで毛穴の中に皮脂溜まりができ、そこにニキビ菌が増殖することで皮膚に炎症が起きる病気です。思春期頃からできやすくなるため、かつては「青春のシンボル」といわれあまり治療をしない方が多い病気でしたが、ニキビがひどくなってしまうことで凸凹としたニキビ跡(瘢痕)を残してしまうため、しっかりと治療をおこない炎症を繰り返さないようにすることが大切です。
ニキビができるまで
ニキビは毛穴にできる病気です。毛穴のつまりをきっかけにして、以下のように悪化していきます。
① 正常な肌
毛穴には皮脂腺という皮膚のアブラ(皮脂)を作る器官があります。正常な皮膚では、この皮脂腺から作られた皮脂は毛穴から皮膚の表面に流れ出し、皮膚を保護したり潤いを与える役割をします。

②《コメド:白ニキビ・黒ニキビ》= 毛穴のつまり
毛穴がつまることで皮脂が皮膚の表面に出られなくなり、毛穴のなかに溜まっていきます。
この状態をコメド(白ニキビ)と呼び、ニキビの赤ちゃんの状態です。詰まった部分が酸化し黒くなった状態を黒ニキビと呼びます。

コメド(毛穴のつまり)の原因として、以下のものが考えられます
・皮膚のターンオーバー(生まれ変わり)のサイクルの乱れ
皮膚は一定のサイクルで生まれ変わりを繰り返しており、これをターンオーバーといいます。このサイクルが乱れることで、古い角質で角層が厚くなり、毛穴のつまりの原因となります。
・皮脂の過剰な分泌
皮脂分泌が過剰になることで毛穴の中で渋滞を起こしてしまうことにより、結果的に毛穴が詰まってしまう原因となります。皮脂分泌が多くなる原因として下記のようなものがあります。
- ホルモンの影響
思春期にはホルモンバランスが崩れて、男性ホルモンが増える傾向があり、思春期ニキビの大きな原因となっています。
また、女性は月経周期や妊娠、更年期などでもホルモンバランスが変化し、皮脂の分泌が多くなります。 - 遺伝的要素
遺伝的要素も皮脂の分泌に影響を与えます。家族にニキビが多い人がいる場合、皮脂の分泌が盛んになりやすい体質を受け継いでいる可能性があります。 - 生活習慣
食生活やストレス、睡眠不足などの生活習慣も皮脂の分泌に影響を与えます。
脂質の多い食生活や睡眠不足などにより皮脂の分泌が促進され、それが皮脂腺の活性化につながるといわれています。
また、生活リズムの乱れなどによるストレスもホルモンバランスを乱し、皮脂の分泌が促進されます。
③《赤ニキビ》= アクネ菌(にきび菌)の増殖
毛穴の中に元々いるアクネ菌は皮脂が大好物です。毛穴つまり(コメド)ができると、このアクネ菌が毛穴の中でどんどん増えていきます。
この菌により炎症反応を起こした状態が「赤ニキビ」と呼ばれる状態です。

④《黄ニキビ》= 化膿して膿がたまった状態
赤ニキビの炎症が悪化すると、毛穴の中に黄色い膿を持つようになります。この状態となってしまうと毛包の壁が破け、ニキビの炎症が周りの組織に広がってしまう可能性があります。さらに重症化するとニキビ跡(瘢痕)を残してしまいます。

ニキビ跡について
赤ニキビ~黄ニキビを繰り返すことで、下記のようなニキビ跡を残してしまう可能性が高くなります。
炎症後の赤み
ニキビの炎症が治まったあと、赤みが残ることがあります。
この赤みはゆっくり時間をかけて薄くなっていくことが多いですが、この期間に日焼けをしたり、こすれなどの刺激が加わることで色素沈着(シミ)が残る可能性がありますので注意が必要です。

クレーター(萎縮性瘢痕・陥凹性瘢痕)
炎症により真皮までダメージが広がることで、クレーターのように凸凹したニキビ跡ができている状態です。この状態になってしまうと塗り薬だけでは改善が難しく、気になる跡として残ってしまいます。

肥厚性瘢痕(ケロイド)
ケロイド体質がある方や炎症が長引いた場合にニキビの傷あとが赤く盛り上がって治ってしまう状態です。

これらのニキビ跡はレーザーなどの保険外診療で目立ちにくくすることはできますが、一度できてしまうと完全に消すことは難しいため、炎症が起きる前のコメド(毛穴つまり)の状態からしっかり治療とスキンケアを始めることが大切です。
皮膚科でのニキビ治療(保険診療)
皮膚科でのニキビ治療では、おおきく分けて下記の2つの方法でアプローチしていきます。
- 《コメド:白ニキビ・黒ニキビ》に対して毛穴のつまりを改善する
- 《赤ニキビ・黄ニキビ》に対してニキビ菌の増殖を抑え、炎症の悪化を食い止める
そして、ニキビ治療でもっとも大切なのは、一旦見た目の症状がよくなってもしっかりと治療を継続し、新しいニキビが出てこないように予防をしていくことです。
《コメド:白ニキビ・黒ニキビ》に対して毛穴のつまりを改善する薬
- ディフェリン(アダパレン)
- ベピオ(過酸化ベンゾイル)
- エピデュオ(アダパレン・過酸化ベンゾイル配合剤)
これらの薬は皮膚のピーリング作用によって皮膚の再生を促すことで毛穴のつまりを改善します。
目に見えない「ニキビのもと」にも効いてくれるため、気になるニキビを治療する段階だけでなく、ニキビが落ち着いてから再発を防ぎ良い状態を維持するためにも大切な薬となります。
また、ベピオには殺菌作用もあるため、赤ニキビに対してもある程度効果が期待できます。
※上記の薬剤は、使い始めの2-3週間は皮膚のかさつき・皮むけ、赤み、ヒリヒリ感などが生じる可能性があります。
この期間で「この薬は自分には合わない」とやめてしまう方が多いのですが、使い方を工夫しながら慣れていくことで徐々に刺激を感じることが減り、良い状態を長く保つことを目指せます。
いろは皮膚科では患者さんのお肌の状態やライフスタイルに合わせて刺激を和らげる方法をお伝えしております。外用の刺激が気になる場合はお気軽にご相談ください。
《赤ニキビ・黄ニキビ》に対してニキビ菌の増殖を抑え、炎症の悪化を食い止める薬
- ダラシン(クリンダマイシン)
- アクアチム(ナジフロキサシン)
- ゼビアックス(オゼノキサシン)
赤ニキビの部分では、炎症を起こす原因となるニキビ菌の治療も行う必要があるため、これらの抗菌外用薬も使用します。それぞれの薬剤ごとに、ゲルやクリーム、ローションなどがあり症状や生活環境にあわせて選択します。
また、重症の場合には一時的に抗菌薬の内服治療をすることもあります。
抗菌薬は基本的に赤ニキビが治まってきたら使用を終了します。
その他
- デュアック(過酸化ベンゾイル・クリンダマイシン配合剤)
症状によっては、上記の2種類の配合剤であるデュアック(べピオ+ダラシン)という薬剤を使用することもあります。
外用薬を塗り分ける負担は少なく済みますが、抗菌薬が入っているため長期間使い続けることはできず、不要な部分にも抗菌薬を塗ってしまうというデメリットもあります。
ニキビ治療(コスメ・ホームケア)
AZAクリア(アゼライン酸高濃度配合クリーム)
アゼライン酸は、海外ではニキビ治療薬として使用されている成分です。毛穴のつまりを解消し皮脂の分泌を抑制する作用やアクネ菌の殺菌、皮脂の酸化抑制によりニキビの悪化を予防する効果もあります。また、メラニンの生成を抑えることで美白作用も期待できます。
ベピオやディフェリンが刺激により使用できない方や妊娠中・授乳中の方にもおすすめの治療となります。
ビタミンCローション
抗炎症作用&皮脂分泌抑制作用をもつビタミンCにより色素沈着予防・毛穴つまりの予防の効果が期待できます。
普段のスキンケアに取り入れることで、ニキビの予防だけでなく、ニキビ跡の赤みの改善、シミの予防にも効果的です。
市販のビタミンCローションに含まれているビタミンCは3%程度の濃度が多いとされていますが、当院のオリジナルVCローションは10%の高濃度のものとなります。
スキンピールバー(赤)
ピーリング作用のある石鹸です。毎日の洗顔で古い角質・毛穴の汚れ・過剰な皮脂を洗い流し、皮膚のターンオーバーをサポートし、ニキビのできにくい肌を目指すことができます。薬を塗りにくい背中ニキビにもおすすめの石鹸です。
※泡立てネットを使用してふわふわの泡で洗うのがおすすめです。
ニキビ治療(自費診療)
ケミカルピーリング
サリチル酸マクロゴールという成分を使ったピーリング施術がニキビに効果的です。
古い角質を除去して肌のターンオーバーを活性化し、ニキビの原因となる毛穴のつまりにアプローチします。この施術ではニキビ・ニキビ跡の改善だけでなく、毛穴の黒ずみや角栓の改善、毛穴の開きの改善などの効果も期待できます。
院内で施術を行うため、手の届きにくい背中ニキビにもまんべんなく効かせることができます。
1回の施術で効果を実感できる場合もありますが、通常は短期的な施術では効果が出にくく長期的な施術が必要です。通常は5-6回の施術で効果を実感される方が多いです。
ヒーライトⅡ(医療用LED治療)
世界で初めて590nmと830nmの2つの異なる波長を搭載した医療用LED治療器をもちいた治療法です。痛みやダウンタイムもなく、ぽかぽかと温かくリラックスして受けることができます。
この治療では、表皮から筋肉層まで光エネルギーを到達させて、肌再生に必要な多くの細胞にアプローチすることでマクロファージや線維芽細胞が活性化され、炎症抑制、ターンオーバー促進、コラーゲン・エラスチン増生、傷ついた皮膚組織の修復(創傷治癒)促進などの効果が期待できます。この作用により、ニキビ・ニキビ跡だけでなく美肌・アンチエイジング効果や各種施術後のダウンタイム軽減、脱毛症の改善など様々な効果が期待できます。
さらに、当院では上記2波長に加えてニキビ菌の殺菌作用をもつ415nm波長の照射が可能な機器を導入しているため、青色の光エネルギーを用いた、より積極的な治療が可能です。
イソトレチノイン内服
イソトレチノインはビタミン A 誘導体の一種で、毛穴の詰まりを抑制する作用、皮脂の分泌を抑える作用、アクネ菌に対する抗菌作用、抗炎症作用などの強い効果があり、 重症ニキビに対して有効な内服薬です。
非常に効果の高い薬剤ですが、患者様によっては副作用が出る場合があるため、治療にあたっては血液検査を定期的に行いながら安全に服用する必要があります。
そのため、これまで保険診療でしっかりと外用薬や内服薬を使用してもニキビの改善が見られなかった方や長年に渡ってニキビに悩まされてきたため根本的な治療がしたい方などに適応となるお薬です。
※イソトレチノインは胎児の先天異常、奇形、流産、早産、死産のリスクがあります。そのため、服薬期間中と服薬後6ヶ月は妊娠してはいけません。
また、授乳中の内服や、服用開始から6ヶ月間の献血もしてはいけません。
※ ケミカルピーリング・ヒーライト・イソトレチノイン内服は自由診療に基づき全額自己負担になります。
生活の注意点 ~ニキビを悪化させないために~
・スキンケア用品は「ノンコメドジェニックテスト済み」のものを使用しましょう。
ノンコメドジェニックテスト済みとは、特定のテストを行いニキビの原因となりにくいことを確認した製品であることを意味しています。コスメなどを購入する前にパッケージを確認し、この記載があるものを使用するようにしましょう。
・保湿のしすぎに注意しましょう。
ニキビ・肌荒れが気になるときは、乳液、クリーム、美容液…と、ついついたくさん保湿をしてしまいがちです。しかし、ニキビに対しては保湿すればするほど良いというものではなく、かえって毛穴をつまらせてしまい悪化の原因のなることがあります。
特に、もともと皮脂が多い思春期ニキビの場合は必ずしも保湿をする必要はありません。
洗顔後のつっぱり感が気になる場合はビタミンCローションなどのさっぱりした化粧水を使うようにしましょう。
・1日2回、泡で優しく洗顔をしましょう。
皮膚の清潔を保つために、朝晩の1日2回、洗顔料を用いて洗顔をすることが大切です。
このとき、ゴシゴシこすり洗いをしたり、スクラブ入りの洗顔料などで皮膚に刺激を与えてしまうとニキビの悪化を招いてしまうため注意が必要です。
洗顔の際には、しっかりと泡立てた洗顔料を使い、泡を肌の上で転がすようにやさしく洗いましょう。
・帰宅後は早めにメイク落としをしましょう。
メイクによる毛穴のつまりは、ニキビ悪化の原因になります。帰宅したら早めにメイクを落とすようにしましょう。
「プラスリストア クレンジングソープ泡ホームケア」は泡でこすらずクレンジングと洗顔が同時にできるため、クレンジングによるニキビ悪化も予防できます。
・紫外線対策をしっかりと
紫外線は、肌の乾燥やニキビ痕(あと)の色素沈着の原因となります。
ニキビ痕の赤みが色素沈着となってしまうことを予防するためにも、男女問わず、そして季節を問わず必ず日焼け止めを使用するようにしましょう。
日焼け止めは2-3時間おきに塗り直すことが大切ですので、日焼け止め効果のあるファンデーションなどを使用している方も、日焼け止めを持ち歩くようにしましょう。
・栄養のバランスのとれた食事をとるようにしましょう。
現在のところ、チョコレートやピーナッツなど特定の食事とニキビの因果関係ははっきりしていませんので、無理に制限する必要はありません。
便秘によってニキビが悪化することもありますので、食物繊維を含む食材や緑黄色野菜などは積極的にとるようにしましょう。おやつ、甘いものの間食はなるべく控え、1日3食の規則正しい食生活を心がけることが大切です。
・皮膚を刺激しない髪型や服装を心がけましょう。
ニキビが気になる部分があるときには、髪の毛や衣服などでその部分を隠したくなってしまいますが、そのことで皮膚が刺激を受けニキビが悪化してしまう可能性があります。
ニキビがある部分に髪がふれないようなヘアスタイルを試してみたり、自宅にいるときはヘアピンやヘアバンドを使って顔に髪がかからないようにするなど、皮膚を刺激しない時間をなるべく作るように意識してみましょう。また、あごまわりなどニキビが擦れるような服装は避けましょう。
・ニキビをつぶさないようにしましょう。
ニキビを自分で潰すことで、傷跡が残ったり、細菌が入って余計に悪化してしまう可能性がありますので、ニキビを潰したりいじったりしないように注意しましょう。
どうしても気になるニキビがある場合、膿の部分が見えているような「黄ニキビ」の場合にはクリニックで圧出の処置ができることがありますので医師にご相談ください。
・睡眠不足にならないようにしましょう
睡眠不足や不規則な睡眠はホルモンバランスに影響することで皮脂の分泌が促され、ニキビの悪化につながります。規則正しく十分な睡眠をとるように心がけましょう。
・ストレスをためないようにしましょう
ストレスは内分泌系を介して皮脂の分泌に影響すると考えられており、ニキビを悪化させる原因になります。ニキビで皮膚科を受診する患者さんの約 30%が受験や就職、結婚などの生活上の変化をきっかけにニキビが発症・悪化しているという報告があります。
また、ストレスがたまるとニキビをさわるなどの行動を無意識に習慣化させてしまうこともあります。ストレスや疲れをためないよう、趣味(音楽・映画鑑賞など)や適度な運動、自分なりのリラックス法でストレスの少ない生活を送りましょう
・タバコは控えましょう
喫煙によりビタミンCが大量に消費されてしまうため、ニキビが悪化するだけでなく、皮膚のくすみの原因にもなります。できるかぎり禁煙を目指すようにしましょう。