皮脂欠乏性湿疹とは
皮脂欠乏性湿疹とは「乾燥肌・カサカサ肌」により皮膚に湿疹やかゆみを起こす病気のことです。
〈寒い季節になってきてだんだんスネや腰まわりがカサカサして粉をふくようになった、痒くて赤くなってきた〉という場合にはこの病気の可能性があります。
皮脂欠乏性湿疹の原因
もともと皮膚の表面は、毛穴から分泌される皮脂によって保護されうるおいが保たれています。加齢や洗い過ぎ、体質などにより皮脂の量が減ったり、季節による乾燥で皮膚の水分量が減ってしまうことで皮膚の一番外側にある角質がはがれ、皮膚のバリア機能が低下してしまいます。すると、衣服のこすれなど、普段はなんともない刺激でも痒みや赤み(湿疹)が生じ、ついつい掻いてしまい、さらに皮膚のバリアが壊されて余計に悪化する… という悪循環になってしまいます。
またこの悪循環が繰り返されることで、かゆみを感じる神経線維が皮膚の表面近くまで伸びるため、刺激に対して敏感になり、軽い刺激でも強いかゆみを感じるようになります。
皮脂欠乏性湿疹の症状
- 皮膚が乾燥しカサカサと白い粉をふいたようになったり、ウロコのようにガサガサする
- 痒み、赤みが出てくる(人によっては表面のピリピリとした痛みを感じる方もいます)
- 症状が悪化すると、コインのような円形のガサガサした赤み・ジクジク(貨幣状湿疹)となることも
特にスネや腰まわり、腕などではもともと皮脂の量が少ないため、これらの症状が出やすくなります。
皮脂欠乏性湿疹の治療
・保湿剤
〈皮膚の乾燥によってかゆみが出ている〉ということを意識して治療することが大切です。
軽度の皮膚のカサカサの段階であれば、市販の保湿剤でスキンケアを行うことで症状の緩和につながります。
もしカサカサが強い場合やかゆみなどを伴う場合には、皮膚科の受診をオススメします。保湿剤と一言に言っても、いろいろな成分のものがあり、保険適応のものや保険適応外のもの、形状も軟膏、クリーム、ローション、スプレー、泡状のものなどさまざまなものがあります。御本人の症状や生活スタイルなどに合った保湿剤を判断してもらうとよいでしょう。
・かゆみ止めの外用薬
乾燥に加えてかゆみや湿疹を伴う場合には、皮膚炎をおさえるためにステロイド外用薬を併用します。湿疹の状態に応じてステロイドの強さや塗り方、併用薬などが変わってきます。
また、かゆみが強い場合には抗ヒスタミン薬等の飲み薬を併用することもあります。
💡治療のコツ その1〈かゆみが治まっても保湿剤の外用は続けましょう〉
皮脂欠乏性湿疹で皮膚科に通院している方でとても多いのが、「保湿剤はかゆみに効かない」「何度も塗るのは大変なので、かゆいときだけかゆみ止めの塗り薬を塗っている」と、保湿剤の外用をやめてしまい、症状が気になるときだけ、かゆみ止めの塗り薬だけ、を使っているパターンです。
これは、保湿剤そのものにかゆみを直接おさえる効果がなく短期間で効果を実感しにくいため、ということが原因と思われます。
しかし、かゆみ止めの外用だけでは赤みやかゆみなどの自覚症状には効果がありますが、大元の原因である乾燥を改善する効果はほとんどありません。そのため、かゆみ止めだけでも一時的には良くなることはありますが、いつまで経っても赤みかゆみを繰り返すこととなり、シミなどを残す原因ともなります。
毎日歯をみがくのと同じように、朝やお風呂上がりに保湿剤を塗ることを習慣にすることを目指しましょう。
💡治療のコツ その2〈塗り薬はたっぷり塗りましょう〉
せっかく保湿剤を使っても、使う量が足りないと効果が減弱してしまいます。外用剤を使う場合、1FTUという目安があり、チューブを指にとったときに第1関節まで押し出した量(約0.5g)を手のひら2枚分に塗ることが推奨されています。ローションの場合には1円玉分がそれに相当します。実際には少しテカテカするくらい塗るのがよいでしょう。
皮脂欠乏性湿疹の予防 ~かゆみを繰り返さないために~
皮脂欠乏性湿疹は日頃の生活習慣も大きく関与しています。外用剤による保湿なども大切ですが、乾燥させないための生活習慣を身につけることができると湿疹を繰り返しにくくなります。
・保湿は必須
皮膚の乾燥は悪化してしまうと市販薬での対応が難しくなってしまいます。日頃から入浴後速やかに保湿剤を使うようにすることで皮脂欠乏性湿疹の予防となります。冬は外気も乾燥しており、屋内は暖房でさらに湿度が下がるため、加湿器を置くなど加湿対策は必須です。過度な日焼けも皮膚の乾燥につながるため、紫外線の強い時期には日焼け止めを塗る、日陰を歩くといった対策を心がけてください。
・入浴時に気をつけること
強い洗浄力の石けんや洗浄剤を避けるようにし、1日に何度も石けんをつけて洗うなど、洗いすぎには注意してください。また、洗い残した洗浄剤が皮膚についたままになっていると乾燥を助長してしまうため注意が必要です。ナイロンタオルやブラシで強くこすると皮膚の水分を奪ってしまいます。身体を洗うときにはお肌の上で泡をころがすイメージで優しくなでるようにしてください。
・しっかり治療、そして保湿
皮膚の乾燥、皮膚バリア機能の低下を防ぐためには生活のなかで気をつけることが大切です。湿疹になってしまうと医療機関の受診が必要となってしまいます。悪化する前に予防すること、日々の保湿を心がけてください。