酒さ rosacea とは
いわゆる赤ら顔のことで、鼻や頬、顎などの皮膚の赤み、火照りが長時間かつ繰り返し出現する病気です。外的な刺激(化粧品や寒暖差など)に過剰に反応して赤くヒリヒリする事が多いです。
30代以上の人が発症しやすく、男性より女性に多いと言われています。
ただ赤いだけの病態もあればブツブツと盛り上がってくる病態もあり、ニキビなどの他の疾患との見極めが難しいことがあります。
また、ステロイドの継続的な使用により酒さと似たような症状が出てくる酒さ様皮膚炎という病気もあるため、皮膚科で診断を受けて適切に治療することが大切です。
酒さの原因・予防
原因は不明と言われていますが、遺伝的、環境的要因が複雑に関与していると考えられています。皮膚の下の毛細血管が広がることで赤みが出てくるため、血管の広がりを抑える(血管が広がるようなことや血流が多くなるようなことを避ける)というのが大切になります。
生活上の主な悪化因子として以下のようなものがあります。
酒さの悪化因子
- 熱い食べ物や辛いものなどの刺激物
- アルコールやカフェイン
- 寒暖差(特に寒さによる刺激)
- 紫外線
- 感情が高ぶる状況やストレス
- 過度の運動
- ホルモンバランス異常
- 喫煙
- 化粧品の刺激やクレンジングなどの摩擦

通常の人でも多少赤みが出るような状況ですね。上記の全てを控えるのは日常生活を送る上でかなり大変ですので、自分の悪化する因子を見極め、日常生活に支障が出ない範囲で控えるのが現実的かもしれません。
酒さの症状
大きく4つのタイプに分ける事ができます。これらの病型が複数混在することもあります。
Ⅰ. 紅斑毛細血管拡張型

顔に持続した赤みが出て、毛細血管の拡張がみられます。
ほてりやヒリヒリ感が出ることがあります。
Ⅱ. 丘疹・膿疱型

赤い盛り上がりや膿のたまったニキビのようなプツプツがみられます。
ほてりやヒリヒリ感があります。
Ⅲ. 鼻瘤・腫瘤型

鼻を中心に赤みがあり、腫瘤(できもの)のようになります。
Ⅳ. 眼型

眼の充血、異物感やかゆみ、乾燥、まぶしさを感じます。
|酒さの典型的な進行
- 酒さ前駆期
紫外線や寒暖差、飲酒、ストレスなどの刺激を受け、頬と鼻の頬に赤みが出現し数時間〜数日持続します - 血管期
皮膚が赤く腫れた様になり、赤くなっている部分は皮膚の下の血管が透けて見えます - 炎症期
ニキビのような小さなぶつぶつができ、膿疱を形成します - 進行期
鼻が赤く腫れ、周囲の皮膚が分厚く変化します。そのまま放置すると、鼻瘤(団子鼻)を形成する事があります。
酒さの治療
日常生活のさまざまな刺激が悪化要因となってしまうため、完治(何もしなくて良い状態)というよりは、寛解(治療を続けながら症状がコントロールされた穏やかな状態)や予防を目指しましょう。
以下の3つが酒さの治療の3本柱となります。
- 悪化因子の除去
ご自分の酒さが悪化する因子を特定し、それを避けましょう。 - スキンケア
日焼け止めを使用し、摩擦を避け低刺激な化粧品を使用しましょう。 - 治療
効果のある治療には、大きく分けて「保険適応のもの」と「保険適応外(自費診療)のもの」があります。
保険診療
|外用
・ロゼックスゲル(メトロニダゾール)
2022年5月から保険適応になった治療薬です。ニキビダニや寄生虫、嫌気性菌に対する抗菌作用に加え、抗炎症作用、免疫抑制作用もあるため酒さの症状の緩和に有効です。赤みに対してはゆるやかに効き、ブツブツに対しては比較的早い段階(数ヶ月ほど)で改善が期待できます。
・イオウカンフルローション
古くから使われているお薬で、皮膚を乾燥させ殺菌作用があります。ニキビダニが原因になっている場合や、皮脂が多いタイプの酒さの症状に効果的です。
|内服
・抗生剤、漢方薬など
自費診療
|外用
・アゼライン酸クリーム
ニキビ治療にも使われる外用薬で、皮脂の分泌を抑える作用、角化の抑制作用、抗菌作用、効炎症作用があります。催奇形性がないため、妊婦さんや妊娠の可能性のある女性に安心して使用できます。
|施術(当院で施行可能なもの)
ビタミンCの抗炎症作用により肌の炎症を抑え、赤ら顔に効果があります
レーザーを照射することで毛細血管の壁や赤血球を破壊して赤みを和らげ、目立ちにくくさせます。また、赤い色素沈着(ヘモグロビン)をターンオーバーで排出させ、少しずつ色素を薄くする効果も期待できます。
酒さ様皮膚炎 rosacea-like dermatitis
酒さによく似ている疾患として、酒さ様皮膚炎という病気があります。これはステロイド外用薬を長期的に使用することで起こる病態で、薬剤を塗っている部分に一致して症状が出ます。ただ、ステロイドを外用薬を使用している全ての方に起こるわけではなく、一部の方に発症し、遺伝的な関連性があるとも言われています。
治療は、原因となっているステロイド外用薬の中止ですが、中止して数日後に一時的に悪化する事があるので、医師の管理のもとで段階的に中止していく必要があります。