デュピクセント治療について
2025.02.14

アトピー性皮膚炎に対するデュピクセント治療(注射薬)について

当院では、既存の治療でコントロール不良な中等症以上のアトピー性皮膚炎に対し、デュピクセント治療を行っています。

デュピクセントとは

デュピクセントはアトピー性皮膚炎の皮疹やかゆみの原因となる「IL-4」と「IL-13」という物質の働きを直接抑えることにより、アトピー性皮膚炎の主な要因である「炎症」「かゆみ」「バリア機能低下」のすべてに対する効果が期待できる、新しいタイプの治療薬です。

既存の外用治療をしっかり継続していてもコントロールが難しい中等症~重症アトピー性皮膚炎の方にも改善効果が期待できます。

デュピクセントの適応について

デュピクセント治療を開始するためには、以下の要件を満たす必要があります

外用薬などの治療で効果が不十分な中等症~重症のアトピー性皮膚炎の方

アトピー性皮膚炎と診断されており、かつステロイド外用剤やプロトピック軟膏、光線療法等による適切な治療を6ヶ月以上行っている必要があります。これらの治療で症状がコントロールできている患者様は適応となりません。

また、デュピクセントの最適使用推進ガイドラインでは下記に示す重症度判定で一定以上のスコアを満たす方が適応とされています。

  • IGAスコアが3以上
  • 全身のEASIスコアが16以上(もしくは頭頸部のEASIスコアが2.4以上)
  • 体表面積に占めるアトピー性皮膚炎病変の割合(%)が10%以上

デュピクセント治療中も外用治療を併用して継続できる方

デュピクセント注射は塗り薬の代わりとはなりません。症状の改善に伴い、徐々にステロイド外用剤の使用量を減らせることが多いですが、デュピクセントによる治療中も毎日の保湿剤外用を続け、ステロイド外用剤・プロトピック軟膏等の定期的な外用を継続していただくことが良い状態を保つために必要となります。

生後6ヶ月以上の方

2023年9月より小児への適応が拡大し、生後6ヶ月からの投与が可能になりました。

アトピー性皮膚炎の症状でお悩みのお子さん、保護者の方へ

アトピー性皮膚炎のせいでかゆくて眠れない、お友達に見た目のことを指摘される、などつらい悩みを抱えているお子さんはとても多く、適応拡大前はせっかく良い薬があるのに年齢制限のために使えないことにもどかしさを感じていました。
当院医師は適応拡大後、多くのお子さんにデュピクセント治療を導入してきました。注射薬というハードルはあるものの、受診のたびにお子さん、保護者の方の表情が本当に明るく笑顔になり、学校の出来事をたくさんお話してくれるようになることを多く経験し、とてもうれしく感じています。

外用治療を頑張っていてもなかなか良くならないアトピー性皮膚炎のつらい症状にお悩みのお子さん、そして保護者の方は、お気軽にご相談ください。

他院で治療中の方

いままで他院でアトピー性皮膚炎の治療をされていた方については下記をご確認ください。

他院でアトピー性皮膚炎に対して外用薬での治療を継続していた方

他院でアトピー性皮膚炎に対して外用薬での治療を継続しており、デュピクセントによる治療を検討されている方は、他院での直近6ヶ月の治療内容がすべて確認できること適切な治療を継続していたことが客観的に十分判断できることが必要となります。必ずお薬手帳をご持参ください

通院間隔が長すぎる方や、ステロイド外用薬等による症状に合った治療を行っていない方などは適応になりませんのでご了承ください。

他院で既にデュピクセントによる自己注射を開始していて、当院で継続をご希望の方

他院でデュピクセント治療を開始した際の重症度スコアを確認する必要がありますので、必ずこれまで通院していた皮膚科で紹介状(診療情報提供書)を書いてもらい、当院にご持参ください
EASIスコア等の詳細が確認できない場合にはデュピクセント治療の継続ができませんので、何卒ご了承ください。

費用について

  • デュピクセント治療は保険適応の治療ですが、『薬剤費』が高額となりますのであらかじめご確認ください。(薬剤費の目安についてはこちらをご参照ください)
  • 薬剤費の他に、診察料、処方箋料、自己注射指導管理料650点(月1回)、導入初期加算料580点(最初の3ヶ月間のみ、月1回)などが必要となります。
  • 年齢・年収・加入している健康保険組合により異なりますが、高額療養費制度の対象となり、自己負担額の上限以上は補助を受けることができる場合があります。
  • 子ども医療費助成制度も適用となります。
  • 公務員の方や特定の企業の方は、福利厚生として付加給付金制度をご利用いただける場合があります。
【付加給付金制度について】

公務員の方や特定の企業の方は、福利厚生として付加給付金制度をご利用いただける場合があります。付加給付金制度をご利用いただける方は、より少ない医療費負担でデュピクセント等のお薬を使用できます。付加給付金制度がご利用可能かについてはお勤め先にてご確認ください

【子ども医療費助成制度について】

デュピクセントは子ども医療費助成制度をご利用いただけます
お住まいの自治体によって適用となる年齢や助成の内容が異なりますので、詳しくはお住まいの自治体にご確認ください。

治療スケジュールについて

デュピクセント治療の開始にあたり、初回および2回目は院内での注射および注射後の経過観察が必要となります。
また、注射を実施する前に薬剤を冷蔵庫から出した後に室温で45分以上置いておく必要があります。そのため、院内注射の当日は時間に余裕をもってご来院いただく必要があります。

成人および体重30kg以上の小児の通院スケジュール例

  1. 投与開始前の病状評価・各種検査 
    • 全身の皮疹の診察および写真撮影を行い、病状(スコア)を評価します。
    • 血液検査を行います。
    • デュピクセントについての説明を行います。(必要に応じて動画の視聴があります)
    • 初回注射日・2回目注射日の予約をお取りします。
  2. 院内注射1回目
    • 看護師指導のもと、院内で初回の注射(初回のみ2本)を行います。
  3. 院内注射2回目《初回注射の2週間後》
    • 診察、病状確認を行い、問題がなければ院内で2回目の注射を行います。
  4. 自己注射開始日《2回目注射の2週間後》※当日順番受付の通常の外来受診となります
    • 経過に問題がなければご自宅での自己注射に切り替えます。
    • 高額療養費制度を利用される方には、最長で3ヶ月分の注射薬を処方可能ですが、症状が落ち着いている場合も症状の確認が必要となりますので、1-2ヶ月ごとにご来院いただき、診察を行います。
    • 治療開始後も定期的に血液検査等の検査を行います。
    • 治療経過記録のために全身の写真撮影を行う場合があります。

※ 小児は体重に応じて投与量やスケジュールが異なります。

投与に注意が必要な方

☐ 寄生虫感染のある方

☐ 生ワクチンを接種する予定のある方

☐ 妊婦または妊娠している可能性のある方、授乳中の方

☐ 高齢の方

☐ 喘息などのアレルギー性疾患をお持ちの方
※デュピクセント治療により、喘息、アレルギー性鼻炎、じんましんなどの症状が軽減することがありますが、自己判断でそれらの治療薬を減量、中止しないでください。

投与後に発現する可能性のある副作用

☐ 過敏症反応
 ふらつき感、息苦しさ、心拍数の上昇、めまい、全身の皮膚のかゆみや赤み、嘔気、嘔吐、関節痛、発熱 などの症状がみられたら、投与を中止し速やかに主治医に相談してください。

☐ 注射部位反応
 デュピクセントを注射した部位に、発疹や腫れ、かゆみなどがみられる場合があります。

☐ ヘルペス感染
 口周りや唇に発疹などがみられる場合があります。

☐ 結膜炎
 目やまぶたの炎症(赤み、腫れ、かゆみ、乾燥など)が出る場合があります。

上記以外にも、副作用が現れた場合には、速やかに医師または看護師にお伝えください。

よくあるご質問

初診の当日からデュピクセントの治療を受けられますか?

デュピクセントの治療を開始するにあたり、これまでの治療期間や治療内容を伺い、重症度のスコア化をしなければなりません。その上で上記の要件を満たし適応と判断されれば開始できるようになります。そのため、初診時には投与できません。
※すでに他院でデュピクセントによる自己注射を開始しており、継続をご希望の方はEASIスコア等の詳細が記載されている紹介状をお持ちいただければ当日より処方可能な場合がございます。

何回目くらいから効果が出ますか?

1回目の投与後2週間程度までに効果を実感される方が多いです。
3ヶ月後くらいまでにはほとんどの方に皮疹・かゆみの改善が見られます。

いつまで注射を続ける必要がありますか?

明確な指標はありませんが、厚生労働省の最適使用推進ガイドラインでは投与開始16週を目安に効果がない場合には中止することとされています。一方、6ヶ月間を目安に症状の寛解維持が得られた場合には、合計1年以上継続することで、中止後も外用剤のみで良い状態を維持できる可能性があるとの報告があります。
そのため、まずは4ヶ月程度続けてみて、その後は症状の経過を見ながら投与期間や投与間隔を相談していくことをおすすめしています。

デュピクセントを中止した後、注射を再開することはできますか?

デュピクセント中止後に外用のみで皮疹がコントロールできなくなった場合、3ヶ月程度の期間を空けてデュピクセントを再開することができます。
ただし、安易に中止することで中和抗体(薬の効果を中和してしまう抗体)が体の中にできてしまい、再開した場合に以前ほど効果が出なくなってしまうことがあり、中止や再開については慎重に検討する必要があります。

インフルエンザ、新型コロナウイルスなどのワクチン接種はできますか?

インフルエンザワクチン、新型コロナウイルスワクチンなど、生ワクチン以外のワクチン接種は可能です。風疹、水痘などの生ワクチンの接種には休薬期間が必要ですので、予定のある方はあらかじめご相談ください。